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スマイルプリキュア!』


今週は先週からの続きで第32話の放送があり、物語は一つの山場に差し掛かっているようですが
今日の日記では今作を取り巻く話題と、過去作との比較を少し行ってみたいと思います。


尚、一部に作品のネタバレとなりかねない要素が含まれております。
記事をご覧になられる際は、予めご承知の上お読み下さい。

●高まる人気

私の周りであったり、コミュニティなりを見ているとスマイルプリキュア!(以下「今作」)の人気というのは過去作と比べてやや高いように感じます。
もちろん私は「大きなお友達」なので、これは「大友」界隈で醸成された気運ではあるのですが、肝心の幼児向け人気というのもしっかりとありそうです。


ではそれは何故かという肝要な部分について、後々私の見解を述べたいと思います。

●基本―物語と登場人物― (9/23現在)

ご存知の方も多いとは存じますが、一応簡単なあらすじとキャラ紹介を・・・


世界を「バッドエンド」へと導こうという「バッドエンド王国」の悪役たちと、その計画を阻止すべく対抗する「メルヘンランド」の妖精「キャンディ」及びその兄「ポップ」
そんなキャンディはバッドエンド王国の悪役に対抗すべく、伝説の戦士・プリキュアを探しに人間界にやってくるのだが、そこで「プリキュア」として戦うことになる5人の女の子(全て年齢は中2・同じクラス)たちと出会う。

プリキュア
キュアハッピー/星空みゆき
絵本が大好きで明るく前向きな女の子。ドジであわてんぼうながらひたむきに頑張る。


キュアサニー/日野あかね
大阪からやってきたお好み焼き屋の関西弁娘。熱血漢でお笑いのようなボケ/ツッコミが大好き。バレー部に所属。


キュアピース/黄瀬やよい
マンガ/イラスト執筆とヒーロー物作品が好きな引っ込み思案で泣き虫な女の子。だが心の芯は強い。幼い頃に父を亡くし、母子家庭に育つ


キュアマーチ/緑川なお
曲がったことが大嫌いな正義感の強い女の子。家は大家族で、ヤンチャな妹・弟たちを取りまとめる姉後肌。サッカー部所属。


キュアビューティ/青木れいか
良家に生まれた真面目で上品なお嬢様。学校では生徒会副会長を務め、頭の回転も速く成績優秀と人望も厚い。弓道部所属。


【妖精】
・キャンディ
メルヘンランドからプリキュアを探しにやってきた妖精。プリキュア発見後も仲間として人間界に残る。


・ポップ
キャンディの兄。性格は男気があり古風で堅物な印象だが、「カッコイイ」など褒められると照れる一面も。


(悪役やその他のキャラクターは割愛とします)

●何故今作はウケたのか?

いよいよというか、暴力的に物語と人物を軽く紹介した後すぐで申し訳ないのですが早速本題に。
様々な要素があると思いますので、1つずつ列挙していきます。

1.「不快感」の少なさ

兎に角今作はこの一言に尽きると思います。
「不快感が少ない」と抽象的・一様に述べるだけではわけがわからないので説明を加えますと―


A「物語を見ていて"辛い""苦しい""退屈"と思う、窮屈にシリアスな場面が少ない」のが特にあるのですが
B「またそのような場面があっても演出・脚本などによりなるべくオブラートに包んだ表現になっている」
とかいったこともあり、1話ごとの後味がいいんです。


では具体説明を


・Aについて
前作「スイートプリキュア♪」なんかがいい比較対象で、序盤はヒロイン2人の喧嘩ばかりで「何だこりゃ・・・」と毎週毎週モチベーション低く見ていました。


今のはかなり極端な例でしたが他にも、人間が潜在的に嫌う「普段はフタをしているが誰しも持つ、本質的に拭い去れない負の部分」を見せられることや
(例えそれが愛や物事の本質的な部分を含んでいるものだったにしろ)「突き放されるような強い表現をされる」などといったこと。(言いにくいけどハートキャッチのゆりさんとか、さっきのならケンカとか)


このようなシーンが今作はまだ少ないように思えます。


・Bについて
これは特に印象に残っているのですが、黄瀬やよいと死別した父との思い出を巡る回(第19話)は今でも印象に残っています。


そこでは父を描く際に「死」「死んだ」という、柳田的論点における後発概念だと「ケガレ」を直接見せる表現は全くなく、やよい・やよい母の持つ「動く父の記憶」という表現を通して「現在父はいない」という事実のみを、眼前に創出させています。
また次にやよい・やよい母の側は、父と別れたことによる「苦しさ」「悲しさ」を語る・思い出すのではなく、父の居ない「現在」を受け入れながら(少なくとも受け入れているように見えた)生活をし、「父の大きな背中」というような楽しかった記憶、またそんな父に対する感謝のみを思い出す・・・
そこに「死」の暗さは感じさせず、感謝と喜びが描かれています。


この第19話は、心から素晴らしい脚本・演出だと思った回です。


他にも、シリアスな場面にも合間にシュール/作為的なドタバタなど問わず笑いが挟まれている印象が強いです。

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これらには「物語の重厚さに欠ける」「結局いつもハイテンションやってるだけ」という批判が起こっています。
起こっているのですが、あくまでも「大友」目線であるということを付記致します。


幼児目線について私はイマイチ分からないが故、私からは何も言うことができません。
ただ、多くの幼児が「いつも静かで重厚な物語」を求めているとは考えられなさそうです。

2.登場人物の量

今作は、プリキュア・妖精・悪役以外の第三者があまりストーリーに登場しません。


前作「スイート」では、音吉さん・奏太・王子先輩・聖歌先輩・和音ちゃん・アフロディテメフィストなどが要所など含めて複数回登場し、ストーリーの一部となっていたと思います。
さらにその前の「ハートキャッチ」も、毎週毎週心の花を枯らされる「何かの闇を背負った」第三者が出てきたり、ゆりさんやえりかといったプリキュア組と複数方向の付き合いがあるもも姉、プリキュアたちの相談役・つぼみ祖母などといったキャラクターが時にストーリーに食い込んできます。


さて、現在のところまでの今作に目を向けてみますと、登場した第三者は各プリキュアの両親・兄弟・お笑いコンビのFUJIWARA・美術部の部長・バレー部の先輩などとスタンダードに人数はいるのですが、それらの人たちがお話に絡んでくるのは大抵1話ポッキリか、あって2話程度なんです。
また1話ポッキリの登場とはいっても、前述した「ハートキャッチ」の"心の花を枯らされる"というように話の中で「印象に残りやすい」キャラクターも居るのですが、今作は「1話しか出ないし、特に何も残さない」というキャラクターが多いように感じます。
例外としてはガッツリと25分間出続け、変身シーン(?)も披露したFUJIWARAでしょうか・・・




三者のキャラクターが少ない、出てきても物語に絡まないということは、物語が広がる「余地」が狭くなることを意味するのですが、その分「途中から/飛び飛びで作品を見ても、キーパーソンとなりそうな第三者と主要キャラとの関係性などについて悩まなくてよい」というメリットがあります。
また、メインターゲットである幼児層にとっても、複数の人間関係を提示するよりも同じキャラクターがいつも出てきて〜とやっている方が単純にわかりやすく、楽しめるのかもしれません。


(それと別なところで商業的な話になるのですが、主要メンバーと比べ商品化してもあまり利益の見込めない/そもそも商品化が滅多にない第三者を出すより、商品の多い主要メンバーをいつも見せてそちらに釘付けになってもらう方が「購買」に直結する可能性が高いのではないでしょうか。)


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さて、上記に対する批判は「1」で示したのと同じく「物語の重厚さに欠ける」といったものや「マンネリ化する」、自分でも明示した「余地が狭くなる」というものです。
確かにこれは私「大友」目線からするとひしひしと感じられます。
ヒロインたちの性格・キャラなどを毎週毎週視聴して理解を深めれば深めるほど、これから先「どう作品を盛り上げて行くのだろう」とか「そろそろパターンが固定化してきた」など感じてしまうんです。
そういった時に新たな物語のベクトル・選択肢としての「第三者」の登場を求めずにはいられなくなります。


いよいよ作品も終盤に向かい、これからどう物語を展開していくのでしょうか・・・

3.基本は1話完結、長くても伸ばして2、3話

3つ目になりましたが、表題の通りです。


今作では大きな目標として「キュアデコルを集める」「ロイヤルクイーン様復活」「バッドエンド王国の魔の手から世界を救う」ということがありますが、もちろんお話はそれに向けて毎週少しずつ進むことになります。
その中には「大なり小なりの出来事・苦労・感動・笑い etc...」があるのですが、それがあまり先延ばしにされないで「1話」という枠の中で、あるいは長くても「2、3話」で小ピリオドが打たれます。


「ちょっと長かったところ」を例示しますと、例えば13〜14話の修学旅行。
21話最後〜23話のキャンディを救うための苦闘。(←今のところここの繋がりが最長?)
そしてつい最近9/23の放送でケリがついた31〜32話のロイヤルクロックとなまけ玉の話。


前作「スイート」では物語の内に「ミューズは敵か味方か、どんな姿か」「セイレーンは心を開くのか」「ピーちゃんは何者か」などのセンテンスが含まれていましたが、そのどれもまず疑問提起から解決までが長く、何回かの放送ではケリがつきませんでした。
ミューズ問題に至っては序盤から出てきて伸ばし伸ばしでクリスマス商戦にも間に合わないほど。




さて、このなるべくグダグダと伸ばさない構成の何処が良いかと言いますと、まずは「飽きさせない」ということが考えられます。
他には「2」とよく被るのですが「途中から/飛び飛びで作品を見ても付いてきやすい」など。


自分は同じ東映アニメーションの作品だと「ワンピース」を子供の頃観ていました。
しかしたかだか1つの戦闘に1ヶ月(4回・5回)もかけたり、兎に角話が進まないんです。
そこに飽き飽きして早々に観ることを止めてしまったという記憶があります。


毎週場面に変化がある1話完結型ですと、その心配が(内容が面白ければ)なく、いつも新鮮な気持ちで眼前のストーリーにワクワクすることができるのではないでしょうか。

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これに対する批判・・・は、ここまで長ったらしい拙文を有難いことに読んで頂けた皆様ならもう予想できていることでしょう。(申し訳ありません)
圧倒的なまでに「重厚さのなさ」に直結するんです。


大きな最終目標に向けて成長する姿が、こま切れの物語ではなかなか見えてきません。
故に、どうしてもこの作品は「薄く」感じられます。

●寸評

今回は上記3項目だけを人気の理由として取り上げましたが、他にも考えるとキリがありません。
例えば「登場する5人のプリキュアのキャラ立ち」なども人気の1つではないでしょうか。
大きなお友達の間では黄瀬やよいが特に人気だとか、そういう〜(僭越ながら私も黄色派です)
もちろんそれだけに限らずヒロイン全員が愛されているように思えます。


さて、今作・スマイルプリキュア!は、進み方が前作「スイート」の対極にあるように思えるんです。
内容の暗さと明るさ、喧嘩するしない、物語の連続性と1話完結性など・・・
(もちろん「プリキュア」シリーズを貫く、諦めない・まっすぐといった部分は共通です)
これはあの震災と絡めて論じていいのかわかりませんが、あれから1年経ち、きっと震災後に上がった企画やコンセプトで作られているであろう「スマイル」は、底抜けなまでに明るくひょうきんで、仲良く、楽しそうなんです。
「生きる」にあたって起こる辛いこと・悲しいことは絶妙にベールを掛けられ、しかしながらそれでいて現実を全く見せないわけでない。絶妙なバランスを保ちながら「生」の楽しみ・「絆」の喜び・希望を発信し続けています。


毎週「今日も楽しかった」と言いながら自分の活力になってくれる今作「スマイル」は、あれこれ考えることなくシンプルにエッセンスが心の中に溶け込んでいきます。
「濃厚」でなくても「あっさり」香る・感じる作品ではないでしょうか。そして気付くと、ひたむきな彼女たちの虜になっている。
変に自分で「理解」を加えずとも楽しめ、学べるのが今作の良さであると思います。
逆に「理解」したい人にとっては、満足行かないかもしれません。


日曜朝は一旦心のドンブリを空っぽにして、お楽しみ下さい。





散文失礼致しました。